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ENFP(広報運動家) の立ち絵
Scenario / Daily / Long

予定が消えた金曜日

ENFP

広報運動家

ドタキャンされた夜を「人生変わるかもしれない夜」に格上げして、五つのことに同時に手を出す人

Prologue

金曜の夜が、ぽっかり空いた。 あなたがもし ENFP なら、がっかりするのは最初の三秒だけだ。次の瞬間にはもう、目がきらきらしはじめている。「待って。じゃあ今夜、まるまる自由ってこと?」。空いた夜は、失われた予定じゃない。何が起きてもいい、まっさらな夜だ。

Phase 01

金曜の夕方。今夜は友だちに連れられて、知らない人がたくさん来る集まりに行くはずだった。 ENFP のあなたにとって、これはただの飲み会じゃない。初めて会う人、聞いたことのない話、思いがけないつながり——そういう「まだ知らない何か」が待っている夜だ。どんな人がいるんだろう。誰とどんな話で盛り上がれるんだろう。そう考えるだけで気持ちがそわそわしてくる。 着ていく服を三回変えて、結局いちばん最初の服に戻る。話のネタになりそうな最近の出来事を、頭の中でこっそり並べてみる。話しやすそうな人がいたらあの話で、映画好きな人がいたらこの話で——と、まだ会ってもいない相手との会話を、勝手にシミュレーションして一人でにやにやする。鏡の前で「はじめまして!」の言い方を、ちょっとだけ練習したりもする。 中身が始まる前から、もう半分くらい楽しんでいる。それが ENFP だ。

ENFP の日常 — 物語の幕開けの場面
Phase 02

ところが、夕方になってスマホが鳴った。 連れて行ってくれるはずの友だちからだ。「ごめん! 体調くずしちゃって、今日は無理そう」。 ふつうなら、ここでしゅんとなる。あんなに楽しみにしていたぶん、落ち込む。 でも、ENFP は違った。「えー、だいじょうぶ? 無理しないで、ゆっくり寝てね!」と本気で相手を心配する。その心配は嘘じゃない。けれど、心配してからほんの数秒で、頭の中の風向きがくるっと変わる。 「……待てよ。じゃあ今夜、わたし、なんでもしていいんだ」。 落胆は、もう消えていた。さっきまで集まりで過ごすはずだった三時間が、まるごと自分のものになった。何に使ってもいい、誰にも文句を言われない三時間。そう思ったとたん、わくわくがこみ上げてくる。 「これ、もしかして……チャンスなんじゃない?」 ぽっかり空いた夜は、もう「ひまな夜」ではなくなっていた。

ENFP の日常 — 物語が動き出す場面
Phase 03

ここからが、ENFP の本領だ。 まず ENFP は、前から気になっていたオンライン講座のページを開いた。「そうだ、わたし、ずっとイラスト描けるようになりたかったんだ!」。勢いのまま申し込んで、ログイン画面まで進む。よし、これで絵が描ける。——のだが、その画面は開いたまま、二度と触られない。 入金を済ませた次の瞬間には、もう別のことを思い出しているからだ。「あ、押し入れにギターあったよね」。引っ張り出して、ほこりをはらって、二、三回かき鳴らす。それだけで満足する。「弾き語り、できたらかっこいいなあ」。 そこで、ふと思いつく。「この気持ち、誰かに分けたい」。スマホを開いて、SNS にこう書き込む。「今夜から本気出す! 一緒に何か始めたい人、いない?」。書き込んだだけで、なんだかすっきりする。ぽつぽつ付くいいねは、おまけみたいなものだ。その勢いのまま、しばらく連絡していなかった友だちに、思いつきで電話までかける。相手は出ない。それでも留守電に「今夜なんか、すごいことになってる! また連絡する!」と、何の説明もないまま吹き込んで、もう次のことを考えている。何がすごいのかは、本人にもよくわかっていない。 その勢いで、今度は台所に立っていた。「せっかくだし、前に動画で見たお菓子、作ってみよ」。粉をふるいはじめる。——その途中で、また閃く。「あ、来月どこか旅行行きたいな。今のうちに調べとこ」。粉のついた指のまま、スマホで航空券を検索しはじめる。画面に粉がぽろぽろ落ちる。 気づけば、ENFP は五つのことを同時にやっていた。泡立て器を片手に持ったまま、もう片方の手で航空券を選び、足もとには弾きかけのギターが転がる。スマホの画面には「本気出す」の宣言と知らない街のホテル一覧が、交互に映っている。途中で講座の確認メールが届くが、開かない。電話の折り返しが来るが、今は手がふさがっている。どれも、まだ何ひとつ終わっていない。それどころか、どれも始まったばかりだ。 台所は粉だらけ、机の上はぐちゃぐちゃ、ギターは床。誰がどう見ても、ただの散らかった部屋だ。なのに、その真ん中に立つ ENFP だけが、大きな仕事をやり遂げた人みたいな顔で、満足げにうなずいている。「うん、今夜は最高だな」。

ENFP の日常 — クライマックスの場面
Phase 04

土曜の朝。 目をさました ENFP は、部屋を見回して、思わずふきだしてしまう。 混ぜかけの生地が固まったボウル。開きっぱなしのイラスト講座のログイン画面。床で寝ているギター。SNS には、ゆうべの「今夜から本気出す!」が、しんと残っている。 ひとつも、完成していない。 ふつうに考えたら、何も成し遂げていない夜だ。なのに、ENFP はなぜか、ものすごく満ち足りていた。ゆうべは、ぜんぶ本気だった。それだけは、たしかだ。 「ま、いっか。今日、どれかひとつ続きやろ」。 そう言いながら、ENFP はもうスマホで別の友だちに「ねえ今日ひま?」と打っている。たぶん今日もまた新しい「やりたい」が割り込んできて、ぜんぶ途中になる。それでも本人は、ちっとも困っていない。何ひとつ終わらなかったのに、もう次が楽しみ。我ながら、ずいぶんお得な性格だと思う。

ENFP の日常 — 結末の場面

Epilogue

予定が飛んだ夜を、ENFP は「何かが起こる夜」に変えてしまう。 五つのことに同時に手を出して、どれも終わらなくて、それでも朝には満タンに充電されている。何も完成していないのに、なぜか明日が楽しみになっている。それが、ENFP という生き物だ。 あなたの今夜が空いたなら、まず何から手をつけますか。そして、そのうちのいくつを、最後までやりきれそうですか。

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