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ESFJ(領事) の立ち絵
Scenario / Daily / Long

予定が消えた金曜日

ESFJ

領事

流れたはずの集まりを、その夜のうちに自分の家で復活させて、全員の好物と帰りの終電まで面倒みてしまう人の話

Prologue

金曜の夜、楽しみにしていた予定が直前に消えた。 空いた時間は、ふつう自分のために使う。ところが ESFJ は、その夜、冷蔵庫にしまった食材と、宙に浮いたみんなの夕飯が、どうにも気になってしかたない。せっかく空いた時間なのに、頭にあるのは自分のことじゃなく、「あの人たち、今夜ちゃんとご飯食べるのかな」だ。 今夜の主役は ESFJ。一人になったはずの夜が、いったいどうやって、みんなの食卓の世話で埋めつくされていくのか。土曜の朝まで、見ていきましょう。

Phase 01

金曜の夕方。ESFJ のあなたは、今夜の集まりを指折り数えて楽しみにしていた。 気の合う仲間と囲む、ただの食事会。でも ESFJ にとっては、ただの食事会じゃない。あの子は辛いものが苦手だから、お店はここ、あの人は最近少し痩せたから、今日はちゃんと食べさせたい。この子はこの前、仕事で異動があったばかり。今日はそばで、ゆっくり話を聞いてあげよう。——みんなの顔を思い浮かべながら、ESFJ の頭の中では、もう一人ずつの「今日の世話プラン」ができあがっている。 みんながおいしそうに食べて、笑って、おなかいっぱいで帰っていく。その顔を見るためなら、ESFJ はいくらでも動ける。今夜のためだって、一週間ずっと、あれこれ考えてきたのだ。 手土産も、もう用意してある。この前おすそ分けをもらったお礼にと、あの家の子どもが好きなお菓子を選んで、紙袋に入れてある。 さあ、そろそろ支度をしよう。みんなの顔が見られると思うだけで、気持ちが弾む。ESFJ は、いそいそと出かける準備をはじめた。

ESFJ の日常 — 物語の幕開けの場面
Phase 02

鏡の前で身支度をしていると、スマホが鳴った。グループのメッセージだ。 「ごめん、何人か都合が悪くなっちゃって……今日はいったん延期にしよう。ごめんね!」 それを読んだ ESFJ の反応は、少し変わっていた。「残念」より先に、心配が口をついて出る。「えっ、みんな大丈夫? 今夜のごはん、ひとりで適当に済ませちゃわないかな」。集まりが流れたことより、来られなくなった一人ひとりが、今夜ちゃんと晩ごはんを食べるのか、気になってしかたない。 ただ——せっかく空けた夜が、まるごと手元に残った。 ここで「じゃあ、家でゆっくりしよう」とはならないのが、ESFJ だ。せっかく集まるはずだったみんなが、今ごろばらばらに、コンビニのご飯でひとり寂しく済ませているんじゃないか。そう思うと、どうにも、じっとしていられない。 冷蔵庫を開けると、今日のために買っておいた食材が、たっぷり残っていた。それを見た瞬間、ESFJ の中で、何かのスイッチが入った。 「……そうだ。来られる人だけでも、うちに呼んじゃおう」 「もったいない」より、みんなにあたたかいものを食べさせたい気持ちのほうがずっと大きい。ESFJ は、さっそくスマホを手に取った。

ESFJ の日常 — 物語が動き出す場面
Phase 03

まず、グループのメンバーを上から順に見ていく。今夜来られると言っていた人、家が近いあの子。その子経由で、もう一人誘えないか。ESFJ は片っぱしから声をかけていく。「よかったら今から、うちでご飯どう? 簡単なものだけど」。すぐに返事が来ない子にも、「無理しないでね。でも、来られたら鍋あるから」と、ちゃんと一言そえておく。一人、二人と「行く!」の返事が来るたびに、ESFJ のエンジンが一段ずつ上がっていく。 台所に立って、さっそく料理をはじめる。頭の中には、来る人それぞれの好みがちゃんと入っている。あの子は辛いのが苦手だから、味付けは二種類に分ける。あの人はダイエット中だと言っていたから、揚げ物は控えめに、野菜を多めに。この子は、前に作った煮物を「また食べたい」と言っていた。——誰が何を好きで、何が苦手か。ESFJ の頭の中の「みんなの覚え書き」が、ここでフル稼働する。 料理をしながら、部屋も片づける。座る場所を決めて、クッションの数を数える。飲み物は足りるか。取り皿は何枚いるか。遅れて来ると言った子のために、汁物はあとから出せるように弱火にしておく。気づけば、店ごとキャンセルになったはずの集まりが、ESFJ の台所で、そっくり別の形になって、湯気を立てはじめていた。 それだけでは、終わらない。鍋を火にかけながら、今日来られなかった人にも一人ずつメッセージを送る。「今日は残念だったね。体調、大丈夫? そういえば、お子さんの受験、どうなった?」。相手の家族のことまで、ESFJ はちゃんと覚えている。返事が来れば、また丁寧に返す。いつのまにか、来なかった人の近況相談まで、鍋のそばで一手に引き受けていた。 そこでふと手が止まる。——五人しか来ないのに、大皿には取り箸を九膳も並べていた。わたし、もしかして、はりきりすぎてないかな。呼ばれてもいないのに集めて、頼まれてもいないのに、こんなに。みんな、ほんとは気を遣ってくれてるだけかも。……でも、玄関のチャイムが鳴って、入ってきた友だちの「わー、いい匂い!」の一言で、その不安は、あっけなく吹き飛んだ。 そこからの ESFJ は、もう止まらない。空いた皿を見つけては「おかわりは? 唐揚げ、もう一個いけるでしょ」とよそう。話が途切れれば「そういえば、あの話どうなったの」と、ちゃんと一人ずつに話をふる。時計を見れば「あなた、終電あと二十分! タクシー呼ぼうか?」と玄関へ送り出し、余った料理は、一人ひとりの好物を詰め分けて、帰りに持たせる。玄関先は、靴とタッパーと「ありがとう」でいっぱいだ。 みんなを送り出して、しんとした部屋に戻る。気づけば ESFJ は、この夜、一度も自分の席に座っていなかった。取り分けたはずの自分のぶんは、すっかり冷めて、テーブルの端に、手つかずで残っていた。

ESFJ の日常 — クライマックスの場面
Phase 04

土曜の朝。ESFJ は、少しだけ疲れた体で目を覚ました。ゆうべは、みんなを送り出して、山盛りの洗い物を全部片づけてから、布団に入った。 スマホには、ゆうべ来てくれた友だちからのお礼のメッセージが並んでいた。「昨日は急なのにありがとう! すっごくおいしかった」。来られなかった人からも、「近況まで聞いてくれてありがとう」と返事が来ている。よかった。みんな、ちゃんと食べて、無事に帰れたみたいだ。 起きて冷蔵庫を開けると、中は、すっかり空っぽだった。ゆうべの食材は料理になって、みんなのおなかに消え、持ち帰りの容器に収まっていた。自分の朝ごはんになるものは、何も残っていない。 ESFJ は、ちょっと笑ってしまった。「自分のために空けた夜だったのに、結局、みんなをもてなして終わったなあ」。 みんなのおなかは、ぱんぱん。なのに、もてなした本人だけが、ろくに食べそびれて、空きっ腹で朝を迎えている。足も、立ちっぱなしで棒のようだ。 それでも、ちょっと嬉しそうなのが、我ながら困る。ゆうべの食卓のあの笑い声を思い出すと、ESFJ はもう、次はいつ誰を呼んで何を作ろうかと考えはじめているのだった。

ESFJ の日常 — 結末の場面

Epilogue

ぽっかり空いた時間を、ESFJ は自分のためには使えない。気づけば、みんなを呼び、ご飯を作り、近況を聞いて、一人ひとりのおなかを満たして送り出している。 本人は、それを少しも大変だとは思っていない。人のおなかを満たしているあいだは、自分が食べそこねていることにも、たいてい気づかない。気づくのは、次の朝、空っぽの冷蔵庫を開けたときだ。 あなたの周りにも、自分が空いた日に限って、なぜかみんなを集めて世話を焼いている人——いませんか。 もしかしたらそれは、あなた自身かもしれません。

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