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ESFP(エンターテイナー) の立ち絵
Scenario / Daily / Long

予定が消えた金曜日

ESFP

エンターテイナー

飛んだ予定のかわりに、自分の部屋を今夜かぎりの会場にして、気づけば散財と寝不足だけが残っている人の話

Prologue

金曜の夜、楽しみにしていた予定が直前に消えた。 ふつうなら、がっかりして、その夜はおとなしく過ごす。でも ESFP は違う。しょんぼりするのは、せいぜい十秒。次の瞬間には、もう「じゃあ、こっちで盛り上がればいいじゃん!」と、目が輝きはじめている。 今夜の主役は ESFP。飛んだ予定のあと、この人が、ただの金曜の夜を、どうやって小さなお祭りに変えてしまうのか。土曜の朝まで、見ていきましょう。

Phase 01

金曜の夕方。ESFP のあなたは、今夜のイベントを何週間も前から心待ちにしていた。 友だち何人かと、大きな音楽フェスに行く約束だった。地面から響いてくる音、みんなでいっしょに手をあげるあの一体感、知らない人ともその場で友だちになれてしまう空気——今夜のことを想像するだけで、体がうずうずしてくる。 準備はばっちりだった。今日のためにえらんだ服。おそろいで作ろうと言っていた、みんなの分の小物。会場で撮る写真のポーズまで、もう頭の中で決めてある。 さあ、そろそろ待ち合わせに向かおう。鏡の前で、くるっと一回転してみる。うん、今日の私、かわいい。ESFP が上機嫌で出かけようとした、そのときだった。

ESFP の日常 — 物語の幕開けの場面
Phase 02

スマホが鳴った。グループのメッセージだ。 「ごめん! 主催のトラブルで、今夜のフェス、急きょ中止になったって……。せっかくみんなで楽しみにしてたのに、ほんとごめん」 画面を見て、ESFP は——さすがに、ちょっとしょんぼりした。「ええー、うそでしょ」。口に出して、しばらくその場に立ち尽くす。 でも、そのしょんぼりは、長くは続かない。ESFP のしょんぼりは、賞味期限がとても短いのだ。 だって、こんなにいい気分で、こんなにかわいい服まで着ている。このテンションのまま、今夜を終わらせるなんて、できっこない。あたためたお祭りムードをこのまま冷ますなんて、もったいなさすぎる。 ——じゃあ、フェスがこっちに来ればいいじゃん。 思いついたら、もう体が動いていた。ESFP は、その場でスマホを開いて、グループにメッセージを打ち込む。「ねえねえ! フェスは残念だったけど、よかったら今から、うち集合しない? ゆるーくおうちフェスやろ!」 送信ボタンを押す指に、もう迷いはなかった。

ESFP の日常 — 物語が動き出す場面
Phase 03

反応は早かった。「行く行く!」「なにそれ楽しそう!」。ぽん、ぽんと返事が返ってくる。ノリでその告知をSNSにも上げたら、しばらく会っていなかった友だちから「え、私も行っていい?」と来た。もちろん、大歓迎。気づけば、来る人数は最初の倍になっていた。 まずは、部屋づくりだ。去年の誕生日の飾りの残り、使っていないキャンドル、クローゼットの奥で眠っていた光るガーランド——あるものを片っぱしから引っぱり出して、壁に留めていく。テーブルを部屋のすみに寄せて、真ん中に、みんなが立てる場所をつくる。ものの十五分で、いつもの部屋が、すっかり様変わりした。 音楽も、止めない。今日フェスで聴くはずだったアーティストの曲を、いちばん大きな音で流す。「せっかくだから、タイムテーブル、再現しちゃお!」。誰に頼まれたわけでもないのに、何時に誰の曲、という順番まで、勝手に組みはじめる。 友だちが着くたびに玄関で出むかえて、こう言う。「ようこそ、本日の出演者!」。出前のピザとお菓子は、値段も見ずに、どんと注文した。この瞬間が最高なら、それでいい。 スマホを立てて、即席のフォトブースも作る。おとなしめの子が来れば、その子がいちばん映える曲をかけて、部屋の真ん中を即席のランウェイにしてしまう。本人は、はじめは照れて笑っている。でも、その照れて笑った瞬間こそ、いちばんいい顔だ。ESFP は、そこをすかさず撮る。撮った一枚を見せると、その子まで「え、なにこれ、いいじゃん!」と笑い出す。——ほら、やっぱり。 気づけば、部屋の真ん中で、みんなが歌って、踊って、写真を撮って——今夜行けなかったフェスより、こっちのほうが楽しいかも、というくらいの熱気になっていた。 夜が更けて、そろそろお開き、という空気になる。——が、玄関で ESFP が「待って、最後の一曲だけ!」と叫ぶと、帰りかけたみんなが、笑いながら、また部屋に戻ってくる。その一曲で、いちばん盛り上がってしまうのだから、世話はない。 そうして、一人、また一人と「今日、ほんと最高だった!」と満足そうに帰っていく。玄関で、みんなをぎゅっとハグして、見送る。 そして、最後の一人が帰ったあと。 しんと静かになった部屋で、ESFP は、ふと、立ち止まった。さっきまでの熱気が、嘘みたいだ。散らかった紙皿、空いたピザの箱、まだ光っているガーランド。その真ん中に一人で立つと、急に、音がぜんぶ消えたみたいだった。——あれ。私、なにやってたんだっけ。 でも、それも、ほんの数秒だった。ESFP はスマホを開いて、さっき撮った写真を見返す。みんなの、最高の笑顔。それを見たら、さっきの静けさなんて、もうどこかへ行っていた。「……うん。やっぱり、今日は最高だった」。

ESFP の日常 — クライマックスの場面
Phase 04

土曜の昼近く。ESFP は、床に転がったクッションを枕にして、目を覚ました。ゆうべは、みんなを見送ったあと、片づけもそこそこに、力尽きて寝てしまったらしい。 部屋はまだ、お祭りのあとのままだ。丸まったガーランドや空き箱が転がる床を見て、ESFP は、あははと笑ってしまう。ずいぶん、派手にやったものだ。 スマホを開くと、通知が山ほど来ていた。ゆうべの写真に、みんなが次々コメントを寄せている。「昨日ほんと楽しかった!」「おうちフェス、また絶対やろうね!」。それを読んで、ESFP は、寝起きの顔で、にまにましてしまう。 そこで、スマホの注文履歴が、目に入った。——あ。出前のピザに、お菓子に、追加のドリンク。それだけじゃない。途中でテンションが上がって、コンビニの宅配で光るカチューシャまで人数分頼んでいた。「うわ、やっちゃった」。でも、その声は、ちっとも深刻じゃない。 財布は軽いし、寝不足だし、部屋は散らかり放題。それでも、ゆうべのみんなの笑顔を思い出すと、やっぱり、まったく後悔していない。 「ま、楽しかったから、いっか!」。ESFP の土曜は、散らかった部屋の真ん中で、そんなふうに始まっていく。

ESFP の日常 — 結末の場面

Epilogue

ぽっかり空いた時間を、ESFP は一人でしずかには過ごせない。空いたと分かった次の瞬間には、もう誰かとどう盛り上がるかを考えて、場をつくりはじめている。 お金が減ろうと、寝不足になろうと、その夜にみんなの笑顔があれば、それでいい。あとに残るのが、散らかった部屋と、軽くなった財布だけだとしても——本人は、まったく気にしていない。 あなたの周りにも、予定が飛んだ日に限って、なぜかいちばん楽しい夜にしてしまう人——いませんか。 もしかしたらそれは、あなた自身かもしれません。

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