診断結果に戻る
ESTJ(幹部) の立ち絵
Scenario / Daily / Long

予定が消えた金曜日

ESTJ

幹部

頼まれてもいないのに、家族と仲間の未決事項をさばく「対策本部」を夜中に一人で立ち上げ、議長も書記も引き受けてしまう人の話

Prologue

金曜の夜、楽しみにしていた予定が直前に消えた。 空いた時間を、ふつうは自分のために使う。ところが ESTJ は違う。気づけば、家族や仲間の「まだ決まっていないこと」を、片っ端から決裁しはじめる。しかも、そのリストに、自分のためのタスクは一つも入っていない。 今夜の主役は ESTJ。ぽっかり空いた夜が、いつのまにか「誰の未決事項をさばく夜」になるのか。土曜の朝まで、見ていきましょう。

Phase 01

金曜の夕方。ESTJ のあなたは、今夜の集まりの幹事だ。 半年ぶりに気の合う仲間が顔をそろえる会。店の予約はもちろん、席順も集金も二次会の候補まで、ぜんぶあなたが押さえてある。開始の三十分前には着くつもりだし、伝票の分け方も、もう頭に入っている。当日、誰も何も考えなくていいように、動きは全部組んである。 段取りが決まっていて、そのとおりに回る。何年も、このやり方で回してきた。ESTJ にとっては、それ自体が気持ちいい。会費がぴったり合う。遅刻者が出ない。話が途切れない。ぜんぶ事前の設計どおりに進む。その手ごたえのために、あなたは動く。 だから今日も、家を出る前に最終確認をした。予約は再確認ずみ。おつりは用意した。遅れそうな二人には、昼のうちにリマインドも送ってある。抜けはない。 支度を終えて、ESTJ は玄関で靴を履いた。あとは店に向かって、今夜の段取りを、そのとおりに回すだけだ。

ESTJ の日常 — 物語の幕開けの場面
Phase 02

玄関を出ようとした、そのときだった。スマホが立て続けに鳴った。 参加予定の一人からだ。「ごめん、急に外せない仕事が入った」。すぐ次。「こっちも子どもが熱を出しちゃって……ほんとごめん」。あわてて残りに確認をとると、来られるのは、あなたを入れて二人。これでは、会は成立しない。 ここで落ち込まないのが、ESTJ だ。理由は理解した。仕事も熱も、動かせない。なら、次の処理だ。 「了解。今日は中止にしよう。店はこっちでキャンセルしておく」。言いながら、もう店の番号を呼び出している。電話で当日キャンセル料がかからないことを確かめ、グループLINEに中止を流し、ついでに振替の候補を三日ぶん打ち込んだ。「この中で行ける日に〇を。多いところで決めます」。 ——ここまでは、幹事として、当たり前の後始末だ。 問題は、そのあとだった。手元にまるまる一晩が残ってしまった。今夜のために、わざわざ空けておいた時間だ。 「さて」。ESTJ は、両手をこすり合わせた。この時間を、遊ばせておく手はない。 そう思ったとたん、頭の奥から、ずっと「あとで」にしてきた未処理の用事がぞろぞろと顔を出してきた。どれも、締切があって、まだ手のついていないものばかりだ。

ESTJ の日常 — 物語が動き出す場面
Phase 03

まず、さっきの振替日だ。返事を待つあいだに、店の第一候補と第二候補まで調べ、それぞれの地図と予算をLINEに貼っておく。ついでに、回答の締切も切った。「水曜の夜まで。未回答は欠席とみなします」。 ——このあたりから、ESTJ のブレーキが、静かに外れる。 目に入ったのは、別のグループLINEだった。来月の集まりの相談が、一週間前から「どうするー?」のまま、ぷかぷか浮いて止まっている。ESTJ は、すっと割って入った。「では〇月〇日で仮決定。店はここ、予算はこのくらい。異論は明日の夜までに」。止まっていた話に、ぽんぽんとハンコが押されていく。そのうえで出欠の表まで作り、頼まれてもいない幹事役を引き受け、リマインドの文面まで下書きした。 誰も召集していない。なのに、いつのまにか会議が始まっていた。議長も書記も、ぜんぶ一人。しかも議題は、放っておくと勝手に増えていく。 家族のLINEが、次の議題になった。父の通院予約が、まだ取れていない。母が返品したい服は、期限まであと二日だ。ESTJ は病院の予約フォームを開いて日時を押さえ、返品の集荷枠を予約し、そのうえで箇条書きの指示を送る。「明日の担当。①病院、9時に電話で確定 ②返品、集荷は15時に来る ③電気のプラン、今の使い方だと割高。乗り換え候補は別便で送る」。 そこで止まればいいのに、勢いは自分の家にも向かう。サブスクの一覧を開き、半年触っていないものに、片っぱしから「解約」の判を押していく。テーブルのメモには、片づいた案件が、上から順に線で消されていた。未決、未決、未決——が、決、決、決に変わっていく。 気づけば、テーブルの上には、今夜さばいた案件が、ずらりと並んでいた。振替日の調整、来月の会の仮決定、家族への指示、契約の見直し。議事録には、決定事項と保留事項と担当者の名前まで、きちんと欄を分けて書いてある。自分のために空いたはずの夜が、まるごと、誰にも頼まれていない対策本部に変わっていた。 そこで、ふと手が止まった。家族に送った指示に、既読の一つもつかない。しんとしている。必要なことを、先回りして片づけただけなのに、返事はない。ESTJ は既読の数字をもう一度たしかめた。やっぱり、ゼロだ。それから画面をふせて、テーブルのメモをとんとんと縦に揃えた。「……明日になれば、ぜんぶ片づいてる。それでいい」。そう口の中でつぶやいて、次の議題に手を伸ばした。

ESTJ の日常 — クライマックスの場面
Phase 04

土曜の朝。ESTJ はいつもの時刻に、ぱっと目を覚ました。ゆうべは議題を片づけきってから、きちんと寝た。寝つきは、いい。 枕元のスマホには、ゆうべ動かした案件の返信が、ぽつぽつ届いていた。来月の会は「決めてくれて助かる、けどその日は無理そう」と、さっそく調整し直す。家族からは「言われなくても、やるつもりだったんだけどな」と、ひとこと。感謝一色、とはいかない。 それでも、ESTJ は満足だった。止まっていたものが、いくつも動き出した。父の通院も、母の返品も、これで期限に間に合う。誰かが、いつかやらなきゃいけなかったことだ。前倒しで片づいた。問題はない。 ただ——ゆうべの「やることリスト」をもう一度ながめて、気づいてしまった。上から下まで、他人の用事で埋まっている。自分のための項目は、一行もない。まるまる空いた一晩を、結局ぜんぶ、人の段取りに使いきっていた。 ESTJ は、ちょっと苦笑いした。「自分の休みだけ、最後まで未処理か」。 そう言いながら、たぶん来週も、同じことをする。世の中に「まだ決まっていないこと」があるかぎり、ESTJ の休みはいつだって、いちばん最後の一件として、あとまわしにされていく。

ESTJ の日常 — 結末の場面

Epilogue

ぽっかり空いた時間を、ESTJ はどうしても、自分のためだけには使えない。目に入った「まだ決まっていないこと」を、片っ端から決めて、指示を出して、期限を切って、片づけていく。 やっていることは、たぶん正しい。実際、いくつもの用事が前に進む。ただ、それを頼んだ人は、どこにもいない。そして本人の休みだけが、いつも最後まで手つかずで残る。 あなたの周りにも、自分が暇になった夜に限って、なぜか他人の予定を仕切りはじめる人——いませんか。 もしかしたらそれは、あなた自身かもしれません。

次に読む

ほかのシナリオを探す