金曜の夕方。INFP のあなたは、今夜のライブを何ヶ月も前から待ちわびていた。 お目当ては、十代のころからずっと聴いてきたアーティストだ。落ち込んだ夜も、眠れない夜も、その人の歌にどれだけ救われてきたかわからない。歌詞のたった一行が、自分でもうまく言葉にできなかった気持ちを代わりに言い当ててくれる。INFP にとって音楽は、ただのBGMじゃない。心のいちばん柔らかいところにまっすぐ触れてくるものだった。 そのライブに今夜やっと行ける。チケットは一緒に行く友人が半年も前に取ってくれていた。 だから INFP の準備は、ちょっと変わっている。着ていく服より先に、まず今夜のセットリストを勝手に予想した。どの曲でたぶん泣くか、もう心の中で決めてある。なんなら、泣く曲は二曲、予約済みだ。会場に向かう電車で聴く曲も、順番までこだわって選んだ。心の準備というやつを誰よりも入念にすませていた。 ——今夜あの歌を生で聴いたら、わたしはきっと、また少しだけ変われる気がする。 そんなふうに、本気で思っていた。




