診断結果に戻る
ISFP(冒険家) の立ち絵
Scenario / Daily / Long

予定が消えた金曜日

ISFP

冒険家

行くはずだった写真展をふいにした夜、あてもなく歩いた帰り道に、その展示より会心の一枚を撮ってしまう人の話

Prologue

金曜の夜、楽しみにしていた予定が直前に消えた。 がっかりは、少しした。でも ISFP は、それを口にする前にもう上着を羽織っていた。行き先は、決めていない。とりあえず、外へ。 今夜の主役は ISFP。予定のない夜に、あてもなく歩き出したこの人が、何を持って帰ってくるのか。土曜の朝まで、見ていきましょう。

Phase 01

金曜の夕方。ISFP のあなたは、今夜の約束を、静かに楽しみにしていた。 友人と、写真展に行く約束だった。前から気になっていた写真家の、初めての個展。その人の切り取る光や色が、ずっと好きだった。実物を、自分の目で見てみたかった。 夕方、支度をしながら、ISFP は、使い慣れたカメラを、かばんに入れた。展示のあと、気が向いたら、街を撮って帰るかもしれない。首から下げるには少し重い。それでも、こういう夜はなんとなく連れていきたくなる。 さあ、そろそろ出かけよう。ISFP が、玄関で靴に足を入れかけた、そのときだった。

ISFP の日常 — 物語の幕開けの場面
Phase 02

スマホが鳴った。友人からだ。 「ごめん! 子どもが熱出しちゃって、今日どうしても行けなくなった……ほんとにごめんね」 画面を見て、ISFP は少しだけ肩を落とした。 「大丈夫、気にしないで。お子さん、お大事にね」。それだけ返して、スマホをしまう。子どもの熱なら、しかたない。責める気は、まったくない。 展示は、一人でも行けた。会期も、まだ残っている。——でも、今日は、その気になれなかった。あの光を初めて見るのは、もう少し静かな日がいい。 かといって、家に戻る気にも、なれない。もう、外に出るつもりで、かばんにはカメラが入っている。 ISFP は、靴を履いたまま、少し考えて——ドアを開けた。 「……まあ、歩こ」 行き先は、決めない。決めないまま、夜の街に出た。

ISFP の日常 — 物語が動き出す場面
Phase 03

さっきまで降っていた雨が、あがったばかりだった。ぬれたアスファルトに、店の明かりが、赤や黄色ににじんで溶けている。ISFP は、その色を目で追いながら歩いた。水たまりを避けもせず、むしろ、明かりがいちばんきれいに映る角度を、無意識にさがしている。 夜の空気は、雨のあとらしい、少し冷たいにおいがした。歩くたびに、ぬれた路面が足もとで小さく光る。信号の赤が、水たまりの中で、ゆらゆら揺れていた。赤信号で立ち止まっても、少しも焦らない。青になるまで、その揺れる赤を、ただ見ていた。 角を曲がると、細い路地に出た。ふだんは通らない道だ。古い喫茶店の窓から、蜜みたいな色の光がもれている。ISFP の足が、そこで止まった。ただ、その光の色に引き寄せられた。 木のドアを押すと、小さな鈴が鳴った。コーヒーを一杯だけ頼んで、窓ぎわに座る。カップから立つ湯気。ぬれた道を行く、傘の列。遠くの、電車の音。店の奥から、小さく流れるふるいジャズ。ISFP は、そのどれもをただながめて、聞いていた。コーヒーは少し苦くて、あたたかかった。 店を出て、また歩く。夜はまだ長い。急ぐことも、帰ることもなかった。 小さな雑貨屋の明かりのついた棚が目に入って、中へ入る。古い道具や食器が、所せましと並んでいた。その棚のすみで、足が止まった。手のひらにのるくらいの、古いガラスのコップ。少し、ゆがんでいる。持ち上げて、明かりにかざしてみた。すると、そのゆがみが店の明かりをくにゃりと曲げて、ガラスの中に、小さな光の粒をつくった。——これだ。何に使うのかは、考えていない。気づいたら、レジに出していた。店員に「贈り物ですか」と聞かれて、いいえ、と首を振る。自分用の、使いみちのないコップだ。それでも、どうしても連れて帰りたかった。 そして、その帰り道だった。 ふと、見上げた。ビルとビルのすきまに、細い月が出ている。街灯のオレンジ。黒い電線。雨あがりの、少しうるんだ空。それが、ぜんぶ、一枚におさまる位置に、ISFP は立っていた。 かばんからカメラを出す。構えたのは、数秒だ。ここだ、という感じだけで、シャッターを押した。 画面で、写りを確かめる。 ——あ。 細い月の下で、ぬれた電線が、街灯の光を、一本だけ、すっと反射している。さっき見た、コーヒーの色。コップのゆがみ。そのどれとも、どこか似た光だった。 ISFP は、指で写真を少しだけ拡大して、もう一度見た。展示で見るはずだった写真のことは、いつのまにか、頭から消えていた。 その画面を、しばらく黙って、ながめていた。

ISFP の日常 — クライマックスの場面
Phase 04

土曜の朝。ISFP は、ゆっくりと目を覚ました。 枕元のカメラを引き寄せて、ゆうべの一枚をもう一度ひらく。細い月と、街灯と、光った電線。朝の光で見ても、いい。ゆうべいいと思ったものは、朝になってもちゃんといい。 テーブルには、ゆうべのガラスのコップがある。水を入れて、窓ぎわに置いてみた。朝日が、ゆがんだガラスを通って、机にくにゃりとした光の模様を落とす。ISFP は、しばらく、それを見ていた。 スマホに、友人からのメッセージが来ていた。「昨日は本当にごめんね! 展示、また今度いっしょに行こう」。 ISFP は、返事の代わりに、ゆうべの写真を一枚、送った。それから、短く付け足した。「昨日の帰り道。なんか、撮れた」 展示は、また今度でいい。コップに、もう少し朝日が差してきた。ISFP は、それをながめている。

ISFP の日常 — 結末の場面

Epilogue

ぽっかり空いた時間を、ISFP は、計画では埋めない。心が動いたほうへ、ふらりと足を向ける。そうして、気に入ったものを、一つ、二つ、持って帰ってくる。 ゆがんだガラス。撮れた一枚。ぬれた道に映った、店の明かり。どれも、人に見せて自慢するものじゃない。ただ、自分がいいと思った。それだけだ。 あなたの周りにも、予定がなくなった日に限って、なぜかいい写真を撮ってくる人——いませんか。 もしかしたらそれは、あなた自身かもしれません。

次に読む

ほかのシナリオを探す