22 歳の春。同期 800 人が並ぶ入社式。 壇上の役員が「会社は家族だ」と話している。INFJ のあなたは、その言葉より、それを聞く同期たちの横顔をぼんやり眺めていた。 (あの子、さっきから一回も笑ってないな。緊張なのか、無理してるのか) その人の気持ちのほうが、話の中身より先に伝わってくる。昔から、そうだった。 配属は営業部。いちばん意外だった。 やってみてすぐにわかった。INFJ は営業に、とことん向いていない。 商談で向かい合うと、相手が口にしたことより先に言いたくないことのほうが見えてしまう。 「前向きに検討します」と笑うお客さんの、ほんの少しこわばった肩。 それだけで(この人、本当はもう断りたいんだ)とわかってしまって、もう押せない。 それどころか「無理に今でなくて大丈夫です」と自分から逃げ道まで用意してしまう。 上司には頭を抱えられた。「なんで、お前のほうが先に引くんだ」。 おまけに、もうひとつ厄介な癖があった。 頼まれてもいないのに、誰かがしんどそうだと勝手にアンテナが立つ。 飲み会で一人だけ黙っている後輩がいれば、その子が抜けやすいよう二次会を断る口実まで頭の中で用意している。 本人は何も頼んでいない。気づいてすらいない。 INFJ だけが、勝手に気を回して勝手に疲れていく。 25 歳。同期が「サブリーダーを」と打診されて目を輝かせる横で、INFJ は会社にいるだけで、少しずつ息苦しくなっていた。 「あなたには話しやすくて」と、なぜかみんなが悩みを置いていく。 気づけば部署じゅうの相談の駆け込み寺。 ただ、その悩みを聞いてくれる人だけは、どこにもいなかった。




