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ESTJ(幹部) の立ち絵
Scenario / Zombie / Long

世界が終わった夜、あなたはこう動く

ESTJ

幹部

最後まで、当番表を書き直していた人の話

Prologue

「『全員に嫌われても、全員を生かす』——あなたなら、そう言い切れる?」 もし明日、東京がゾンビで溢れたら——あなたなら、どうする? 逃げる? 戦う? それとも、仕切る? 人口 1400 万。MBTI 16 タイプ。生き残るのは、たぶん、ほんの一部。 今日の主役は、ESTJ。 最後の朝、何を残して消えた人なのか——これから見ていく。

Phase 01

20XX 年 X 月 X 日、火曜日のお昼前。 ESTJ のあなたのスマホに、ふたつの通知が、ほぼ同時に届いていた。 ひとつは、自治体の緊急放送。 もうひとつは、会社のセキュリティアラート。 「来たな」 ESTJ は、つかの間、唇を引き結んだだけだった。 驚きはなかった。 浮かんだのは、「対応すべき事案が、また一つ増えた」だけだった。 オフィスのデスクの一番下、引き出しの奥に、ずっとしまっておいた紙の束があった。 自分で作った、避難マニュアルのコピー。 何年も前から、年に一度は見直していた。 裏側には、想定外の感染症が出たときの手順も、念のため書き込んであった。 ESTJ にとって、平時の備えは、こういう瞬間のためにあった。 焦りはなかった。 慌てるのは、準備していなかった人間がすることだ。 オフィスを出る前に、社内のメーリングリストに 1 通だけメールを送った。 件名「全社員 至急」。 本文 3 行。 出社禁止。安全な経路で帰宅。家族の安否確認。それだけ。 これで、たぶん、半分は救えると思った。 そこから ESTJ は、まっすぐ中央高校の体育館へ向かった。 自治体放送が、避難所として指定した場所。 ESTJ は、その時点で、もう「責任者を引き受ける」つもりでいた。 誰にも頼まれていなかったが、本人にとっては、それが当然だった。

ESTJ のゾンビサバイバル — 物語の幕開けの場面
Phase 02

第 1 日の夕方、ESTJ は中央高校の体育館に着いた。 中はもう、混乱の塊だった。 泣いてる子供。 怒鳴ってる若い男。 うずくまったままの老人。 荷物をどこに置けばいいかも、誰に聞けばいいかも、分からない大人たち。 ESTJ は、入口でその光景を、5 秒ほど見渡した。 それから、声を出した。 よく通る、まっすぐな声で。 「皆さん、聞いてください」 3 時間後、体育館には組織図と当番表が完成していた。 炊き出し班、見張り班、衛生班、子供のケア班、医療補助班。 それぞれに班長を決め、シフトを書き出して、壁に貼った。 誰が、いつ、何をするか、A4 用紙に手書きで、ぜんぶ。 泣いていた子供にも、役割を一つだけ振った。 「水を配るのを、手伝ってくれる?」 その子は、泣くのを止めた。 で、ここに ESTJ が世間で一番誤解されやすいポイントが出てくるんだよね。 この人、ゾンビが溢れた東京で最初にやったのが、「集団を仕組みで生かすこと」だったんだよね。 ほら、震災のとき、町内会長が冷静に当番を回して炊き出しを続けさせる、あれ。 誰の子かも分からない子供たちにも、ちゃんと役割を振って、仕組みの中で動かしていく、あれ。 あれの、極限値みたいな話なんだよ。 第 7 日。体育館には 200 人近くが集まっていた。 ESTJ がそこでやっていたのは、誰ひとり「飢えで死ぬ」ことがないように食料を回すことだった。 配給は、厳密に時間どおり。 誰がどれだけ食べたか、当番表の隣のチェック表に、毎日 ESTJ 自身が書き込んだ。 夜の見張りに穴があいたら、ESTJ が代わりに立った。 誰よりも早く起きて、誰よりも遅く寝る人だった。 ただね、ESTJ の規律には、ひとつだけ、見落としがあるんだよ。 規律のために死ぬ人が出ても、本人だけが、それを規律のせいだと認められない、ってこと。 だから、痛かった。 その痛みに、本人だけが、気づかないふりをしていた。 そのまま、第 30 日が来た。

ESTJ のゾンビサバイバル — 物語が動き出す場面
Phase 03

第 30 日の夜。 体育館の壁に貼られた組織図には、もう、3 人の「死亡」マークが追加されていた。 3 人とも、感染兆候を隠していたことが規律違反とされ、隔離された人だった。 「咳が止まらないなら、隔離区画に移ってください」 「ルールです」 「ここを乱されると、200 人が死にます」 ESTJ は、淡々と言った。 正しかった。 正しかったから、3 人は、隔離されたまま、死んだ。 その夜、ESTJ は、誰もいない通路で、ひとりで当番表を書き直していた。 明日からの炊き出し当番。 明日からの見張りシフト。 明日からの衛生班の動線。 細かい字で、A4 用紙に、ぜんぶ。 通りかかった生存者の一人が、足を止めて、背中ごしで言った。 「あの人がいると、また誰か死ぬよ」 小声だったけど、はっきり聞こえる距離だった。 本人にも、たぶん、聞こえていた。 ESTJ は、振り返らなかった。 ペンも止めなかった。 ただ、当番表のその日のシフト欄で、自分の名前だけに、一度、線を引いて、書き直した。 それ以外は、何も変えなかった。 夜中、ESTJ がやっていたことを、ちゃんと見ていた人は、ほとんどいなかった。 ただ一人、たまたま通路の反対側で寝ていた老人だけが、後で、こう話した。 ESTJ は、夜が明けるまで、机に向かっていた、と。 組織図の余白に、一つだけ、何か書き加えていた、と。 それを書き終えると、ペンを置いて、長く、息を吐いた、と。 そのときだけ、肩が、すこし、下がって見えた、と。 その老人は、ESTJ が夜の見張りのたびに、いつも一番に水を渡していた相手だった。 本人は、そのことを、知らなかった。

ESTJ のゾンビサバイバル — クライマックスの場面
Phase 04

朝。 ESTJ がいた場所には、清書された組織図と、最終版の当番表だけが、几帳面に並べてあった。 本人は、いなかった。 組織図の余白には、一行だけ、書き加えてあった。 「責任者:(欠員)」 それだけだった。 体育館に残った 200 人は、その日も、ESTJ の作った当番表どおりに動いた。 動かないわけには、いかなかった。 仕組みは、もう、回っていたから。 半年後。 体育館の壁には、ESTJ の当番表が、几帳面なまま、貼られていた。 誰も、剥がさなかった。 本人がいないところで剥がすのは、なんとなく、恐ろしかったから。 ESTJ は、たぶん、知っていた。 自分のやり方が、誰かを救って、誰かに恨まれること。 誰かを朝まで生かして、誰かに「あの人がいると、また誰か死ぬ」と言われること。 それでも、最後まで、当番表を書き直していた。 たぶん、それが、ESTJ にとっての、責任の取り方だった。

ESTJ のゾンビサバイバル — 結末の場面

Epilogue

ESTJ の選んだ朝、いかがでしたか? 「もし自分なら、嫌われてでも仕切る?」「いや、私はそこまで強くない」——どっちの答えでも、それは ESTJ が間違ってるんじゃなくて、人間って、それくらい簡単に割り切れない、ってだけ。 その答えを考えると、たぶん、誰かの当番表が浮かんでる。 「あの人がいると、また誰か死ぬよ」って言われた人、あなたの周りに、いませんか。

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