20XX 年 X 月 X 日、火曜日のお昼前。 ESTJ のあなたのスマホに、ふたつの通知が、ほぼ同時に届いていた。 ひとつは、自治体の緊急放送。 もうひとつは、会社のセキュリティアラート。 「来たな」 ESTJ は、つかの間、唇を引き結んだだけだった。 驚きはなかった。 浮かんだのは、「対応すべき事案が、また一つ増えた」だけだった。 オフィスのデスクの一番下、引き出しの奥に、ずっとしまっておいた紙の束があった。 自分で作った、避難マニュアルのコピー。 何年も前から、年に一度は見直していた。 裏側には、想定外の感染症が出たときの手順も、念のため書き込んであった。 ESTJ にとって、平時の備えは、こういう瞬間のためにあった。 焦りはなかった。 慌てるのは、準備していなかった人間がすることだ。 オフィスを出る前に、社内のメーリングリストに 1 通だけメールを送った。 件名「全社員 至急」。 本文 3 行。 出社禁止。安全な経路で帰宅。家族の安否確認。それだけ。 これで、たぶん、半分は救えると思った。 そこから ESTJ は、まっすぐ中央高校の体育館へ向かった。 自治体放送が、避難所として指定した場所。 ESTJ は、その時点で、もう「責任者を引き受ける」つもりでいた。 誰にも頼まれていなかったが、本人にとっては、それが当然だった。




