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ENTJ(指揮官) の立ち絵
Scenario / Zombie / Long

世界が終わった夜、あなたはこう動く

ENTJ

指揮官

20 人を率いて、ひとりになった人の話

Prologue

「『で、結論は?』——会議でも、災害でも、つい、そう言ってしまう。あなたは、そっち側の人間ですか?」 もし明日、東京がゾンビで溢れたら——あなたなら、どうする? 逃げる? 戦う? それとも、率いる? 人口 1400 万。MBTI 16 タイプ。生き残るのは、たぶん、ほんの一部。 今日の主役は、ENTJ。 20 人を率いた人が、半年後、なぜ屋上にひとりでいるのか——これから見ていく。

Phase 01

20XX 年 X 月 X 日、火曜日の昼ごろ。 ENTJ のあなたのスマホに、速報が飛び込んできた。 「東京、ゾンビ発生」。 ふつうの人なら、ここで、声が出なくなる。 ENTJ は、ちがった。 画面を見た瞬間、もう、避難計画を七手先まで組んでいた。 実を言うと、ENTJ は、その三日前から、何か来る、と思っていた。 海外の株価と為替が、おかしな動きをしていた。 理由までは、わからない。でも、データは「異常だ」とはっきり示していた。 ただ——来たものが、ゾンビだったのは、さすがに、予想の外だった。それだけ。 ENTJ は、立ち上がった。 そして、マンションの住人たちに向かって、こう言い切った。 「全員、A 棟の地下駐車場に、集合。二十分後に、バスで、西へ。逆らうやつは、置いていく」。 その声に、迷いはなかった。 ふだん、自分で決めるのが苦手な人でも、そう言われると、思わず足が動いた。 パニックで荒れた廊下が、ENTJ の一声で、ひとつの隊列に変わっていく。 これは、夢でも、ゲームでもない。 ENTJ にとっては——指揮の出番だった。

ENTJ のゾンビサバイバル — 物語の幕開けの場面
Phase 02

で、ここがね、ENTJ の「一人で歩ける強さ」と「一人で歩く寂しさ」って、表裏一体でさ。 この人の頭の中には、いつも、五手先まで読むチェス盤が入っているみたいなんだ。 だから、「やばいやつ」が出た瞬間に、ENTJ には、もう、次の三十手が、見えている。 ほら、災害のニュースで、たまに、映るでしょ。 パニックの群衆を、ひとりの現場指揮官が、たった数分で、整列させてしまうシーン。 あなたも、見たことありませんか。 あれが、ENTJ の最強モードなんだ。 誰も決められない会議を、五分でまとめるとき。 無理だと言われた仕事を、期限内に、ねじ込むとき。 ふだんの ENTJ は、そこで、いちばん、輝く人だった。 ゾンビの東京でも、それは、同じだった。 ENTJ は、最初の一週間で、二十人を、まとめあげた。 誰が、何を運ぶか。誰が、前で、誰が、後ろか。 食料も、寝る場所も、見張りの順番も、ぜんぶ ENTJ の頭の中の表に沿って動いていた。 二十人は、ENTJ がいたから、生きて、西へ、進めた。 それは、まぎれもなく、本当のことだった。 ここがね、ENTJ を見ていて、すごいなと思うところなんだけど。 ENTJ にとって、人を率いるのは、威張りたいからじゃないんだ。 「この方法なら、全員、死なせずにすむ」。 その計算こそが、ENTJ なりの、いちばん大きな優しさだった。 ただ、その優しさは、いつも、命令のかたちをしていた。 だから、なかなか、伝わらなかった。 そして、ENTJ には、ひとつ、誤算があった。 ENTJ の頭の中の表は、たしかに、完璧だった。 でも、その表を動かすのは、機械じゃなくて、人間だった。 人間は、ENTJ が思うほど、速くも、強くも、なかったんだ。

ENTJ のゾンビサバイバル — 物語が動き出す場面
Phase 03

二週間目。 隊列のいちばん後ろが、遅れはじめた。 足を痛めた人。子どもを抱えた人。こわくて、足がすくむ人。 ENTJ の頭の中の表は、その日のうちに、答えを出した。 「このペースだと、全員、共倒れになる」。 ENTJ は、八人に、こう告げた。 「ここから先は、別行動だ。これは、ルール違反者への、措置だ」。 ルール違反。 そう言えば、それは、ENTJ のせいじゃなくなる。 一ヶ月目。 進む道の途中で、五人が、迷いはじめた。 「本当に、西で、合っているのか」と。 ENTJ は、引き止めなかった。 「自由意思だ。残りたいなら、残れ」。 自由意思。 そう言えば、置いていったのは、ENTJ じゃなくなる。 最後に残ったのは、三人の精鋭だった。 ENTJ の指示に、いちばん、ついてこられる三人。 でも、三ヶ月目には、その三人さえ、ENTJ の速さには、追いつけなくなっていた。 その夜、ENTJ は、こう言った。 「俺は、先に行く。後は、自由だ」。 そして、ひとりで、歩き出した。 誰も、追っては、こなかった。 それは、ENTJ にとって、いちばん楽なはずだった。 誰の足並みも待たなくていい。誰の弱音も計算しなくていい。 頭の中の表の中身が、ぜんぶ、ENTJ ひとりになった。 でも、その夜は、長かった。 指揮する相手は、もうゼロ。それでも、ENTJ の頭の中で、あの機械は、まだ、回っていた。 回って、回って——命令する相手を探していた。 でも、どこにもいない。 機械は、空回りしたあと、ふと止まった。 その静けさの中に、ENTJ が切ってきた顔が、ひとつずつ、浮かんできた。

ENTJ のゾンビサバイバル — クライマックスの場面
Phase 04

半年後。 ENTJ は、廃ビルの屋上に、ひとりで、いる。 食料の備蓄。水の確保。ゾンビが来る方角と、時間帯。 防衛ラインは、完璧だった。 地図を、毎日、引き直す。その全部を、ENTJ ひとりで、回していた。 ENTJ は、たしかに、生き残った。最後まで、勝っていた。 ただ、ときどき、地図を引く手が、止まる。 切ってきた誰かの顔が、ふっと、浮かぶからだ。 前の ENTJ なら、その顔を、すぐ、消した。 「あれは、ルール違反だった」「あれは、自由意思だった」。 そう言って、表の外に、はじき出した。 でも、半年、ひとりでいた ENTJ は、もう、それを、しなくなっていた。 あれは、ルール違反じゃ、なかった。自由意思でも、なかった。 ——俺が、切った。 その事実を、ENTJ は、はじめて、消さずに、置いておけるように、なっていた。 SNS は、もう、動かない。 だから、誰も、知らない。 東京で、最後まで、指揮を続けている人間が、ENTJ だということを。 そして、その指揮官が、切ってきた顔を、ぜんぶ覚えたまま、地図を引いていることを。 ENTJ は、いちばん強く、ひとりで、歩けた人だった。 ひとりで歩けたから、いちばん遠くまで、来られた。 ただ、その遠さを「寂しさ」と呼べるようになるまで、半年かかった。

ENTJ のゾンビサバイバル — 結末の場面

Epilogue

ENTJ の生き残り方、いかがでしたか? 「これ、絶対自分やる」「いや、私は誰かを置いていけない」——どっちの答えでも、それは ENTJ が間違ってるんじゃなくて、人間って、それくらい簡単に割り切れない、ってだけ。 その答えを考えると、たぶん、置いていく誰かの顔が、浮かんでる。 「ついてこられないなら、置いていく」って言いきれる人、あなたの周りに、いませんか。

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