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ENTP(討論者) の立ち絵
Scenario / Zombie / Long

世界が終わった夜、あなたはこう動く

ENTP

討論者

ゾンビに追われても、そのゾンビを面白がっていた人の話

Prologue

「『逃げるより先に、"なんでこうなるんだ?" が気になっちゃう』——あなたは、そっち側の人間?」 もし明日、東京がゾンビで溢れたら——あなたなら、どうする? 逃げる? 戦う? それとも、検証する? 人口 1400 万。MBTI 16 タイプ。生き残るのは、たぶん、ほんの一部。 今日の主役は、ENTP。 最後のノートに、何を書き残して姿を消した人なのか——これから見ていく。

Phase 01

20XX 年 X 月 X 日、火曜日の朝。 場所は、自宅のトイレ。 ENTP のあなたは、スマホで開いた Twitter のトレンド欄で、最初の違和感に気づいた。 「#ゾンビ」が、1 位。 ふつうなら、誰かのドッキリか、新作ゲームの宣伝だと思って、スワイプして終わる。 でも、ENTP は、RT の伸び方を追った。 伸びていくカーブが、おかしかった。 広告のバズとも、ネタツイの広がりとも、違う。 明らかに、大勢が本気で同時につぶやいていた。 「マジか。これ、本物来てるわ」 半笑いだった。 怖さより先に、「どういう仕組みで、こうなった?」が来ていた。 自治体の速報が鳴ったのは、その 30 分後。 そのときには、ENTP はもう、家を出ていた。 ENTP が向かったのは、避難所じゃなかった。 街外れにある、取り壊し予定のまま放置された廃ビル。 その 3 階。 選んだ理由は、ふたつ。 ひとつは、ちゃんと合理的。 階段が一本だけだから、見張りやすいし、逃げ道も計算できる。 もうひとつは、ENTP にしか分からない理由。 3 階の窓から、街全体を、一望できた。 ゾンビが、どこへ集まり、どこを避けるのか。 動きが、全部見える。 ENTP は、リュックから 1 冊のノートを出して、開いた。 表紙に、自分の字で、こう書いた。 「ゾンビ行動パターン仮説 v1」。 このときの ENTP の頭の中には、恐怖が、ほとんどなかった。 あったのは、たぶん、世界でいちばん不謹慎な感想だけ。 「これ、めちゃくちゃ面白いやつだ」

ENTP のゾンビサバイバル — 物語の幕開けの場面
Phase 02

で、ここがさ、ENTP の「ワクワクポイント」が普通と違うところでさ。 この人、ゾンビが溢れた東京を見て、ワクワクが、先に来ちゃったんだよね。 ほら、YouTuber が「○○って本当に△△なの? 検証してみた」って動画を作る、あれ。 誰もまだ確かめていないことを、自分の手でいちばん最初に確かめる、あれ。 あれの、極限値みたいな話なんだよ。 廃ビルの 3 階で、ENTP は毎日、仮説を立てては検証していた。 ゾンビは、音に反応するのか。 光か、匂いか、体温か。 それとも、群れの動きか。 ひとつ仮説を立てて、現場で試して、外れたら、すぐ次へ。 ノートの表紙の番号が、v1、v2、v3 と、増えていった。 仮説が外れること自体は、ENTP にとって、ぜんぜん、つらくなかった。 むしろ、外れるたびに、「じゃあ、次はこれだ」って、目が輝いた。 第 7 日。 廃ビルには、ENTP のほかにも、何人かの生存者が、流れ込んできていた。 そのうちの一人が、ノートに向かう ENTP を見て、言った。 「あんた、こんな状況で、何やってんの。早く逃げようよ」 ENTP は、ノートから顔を上げて、半笑いで、こう返した。 「いや、待って。これ、法則あるって。法則さえ分かれば、ただ逃げるより、ずっと安全に動ける」 ENTP は、本気だった。 そして、たぶん、それは半分当たっていた。 ENTP は、議論できる相手を、ずっと、探していた。 自分の仮説に「それ、おかしくない?」って突っ込んでくれる、誰かを。 でも、廃ビルの誰も、ゾンビの行動法則になんて、興味がなかった。 だから ENTP は、ノート相手に、ひとりで議論を続けた。 ただね、ENTP の検証には、ひとつだけ、どうしても埋まらない穴があるんだよ。 ゾンビは、ENTP の仮説を、読んでくれない、ってこと。

ENTP のゾンビサバイバル — 物語が動き出す場面
Phase 03

第 30 日の夜。 ノートの表紙の番号は、もう「v16」になっていた。 ENTP は、この日、確信の一歩手前まで来ていた。 「ゾンビは、音そのものより、床に伝わる振動に反応する」。 それが、仮説 v16。 15 回、自分の仮説を、自分の手で壊してきた。 その果てに、ようやく残った、たったひとつの結論だった。 ENTP は、廃ビルの 3 階の廊下で、最後の検証をしていた。 廊下の奥で、わざと軽い振動を出す。 ゾンビが、そっちを向く。 音を立てずに、振動だけを変える。 ゾンビの向きが、また変わる。 何度繰り返しても、結果は同じだった。 「やっぱり、振動だ」 ENTP は、ノートに、その一行を書き込んだ。 このときの ENTP は、人生でいちばん機嫌が良かったのかもしれない。 誰も解いていない問題を、自分が、いちばん最初に解いた。 頭の中には、その感覚だけがあった。 その直後だった。 ENTP の、真後ろ。 足音も、床に伝わる振動もなく、ゾンビが、立っていた。 仮説 v16 では、絶対に起きないはずの、現れ方だった。 ENTP が最後にノートに書いた言葉は、これだった。 「例外パターンあり——」 ペンは、そこで、止まっていた。 あとで、廃ビルの生存者の一人が、こう話した。 あの人、最後の一瞬、悲鳴を、あげなかった、と。 振り返って、ゾンビを見て、ほんの一瞬だけ、こうつぶやいたように見えた、と。 「うそ、なんで」。 それは、怖がっている顔じゃなかった、と。 どちらかというと、最後の最後まで、面白がっている顔だった、と。

ENTP のゾンビサバイバル — クライマックスの場面
Phase 04

半年後。 廃ビルの 3 階で、別の生存者の一人が、1 冊のノートを拾った。 表紙の番号は、「v17」になっていた。 その夜のどこかで、ENTP は、表紙の「v16」を、自分の手で「v17」に書き直していた。 「例外パターンあり」と書いた、あの一行のために。 ノートには、30 日分の仮説が、ぎっしり詰まっていた。 音、光、匂い、体温、群れ、振動。 立てては壊し、壊しては立て直した、17 回分の思考の跡。 拾った生存者は、最後まで読んで、少しだけ笑った。 こんな世界で、こんなノートを、楽しそうに書き続けた人がいたのか、と。 ただ、最後の 1 ページだけは、白いままだった。 「仮説 v17」の中身を、誰も知らない。 ENTP 本人にも、たぶんまだ、分かっていなかった。 ENTP にとって、世界は、最後まで、解き終わらない 1 個の謎だった。 正解にたどり着くことより、謎が、まだ残っていること。 そっちのほうが、ずっと面白かった。 だから ENTP は、ゾンビに追われても、そのゾンビを、最後まで、面白がっていた。 たぶん、それが、ENTP にとっての、生き方だった。

ENTP のゾンビサバイバル — 結末の場面

Epilogue

ENTP の生き方、いかがでしたか? 「こんな時でも、自分なら面白がれる?」「いや、私はまず逃げる」——どっちの答えでも、それは ENTP が間違ってるんじゃなくて、人間って、それくらい簡単に割り切れない、ってだけ。 その答えを考えると、たぶん、誰かの未完成のノートが浮かんでる。 「こんな時に、何やってんの」って言われても、なぜか手が止まらない人、あなたの周りに、いませんか。

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