20XX 年 X 月 X 日、火曜日の朝。 場所は、自宅のトイレ。 ENTP のあなたは、スマホで開いた Twitter のトレンド欄で、最初の違和感に気づいた。 「#ゾンビ」が、1 位。 ふつうなら、誰かのドッキリか、新作ゲームの宣伝だと思って、スワイプして終わる。 でも、ENTP は、RT の伸び方を追った。 伸びていくカーブが、おかしかった。 広告のバズとも、ネタツイの広がりとも、違う。 明らかに、大勢が本気で同時につぶやいていた。 「マジか。これ、本物来てるわ」 半笑いだった。 怖さより先に、「どういう仕組みで、こうなった?」が来ていた。 自治体の速報が鳴ったのは、その 30 分後。 そのときには、ENTP はもう、家を出ていた。 ENTP が向かったのは、避難所じゃなかった。 街外れにある、取り壊し予定のまま放置された廃ビル。 その 3 階。 選んだ理由は、ふたつ。 ひとつは、ちゃんと合理的。 階段が一本だけだから、見張りやすいし、逃げ道も計算できる。 もうひとつは、ENTP にしか分からない理由。 3 階の窓から、街全体を、一望できた。 ゾンビが、どこへ集まり、どこを避けるのか。 動きが、全部見える。 ENTP は、リュックから 1 冊のノートを出して、開いた。 表紙に、自分の字で、こう書いた。 「ゾンビ行動パターン仮説 v1」。 このときの ENTP の頭の中には、恐怖が、ほとんどなかった。 あったのは、たぶん、世界でいちばん不謹慎な感想だけ。 「これ、めちゃくちゃ面白いやつだ」




