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ESFJ(領事) の立ち絵
Scenario / Zombie / Long

世界が終わった夜、あなたはこう動く

ESFJ

領事

最後まで、誰のことも置いていけなかった人の話

Prologue

「『置いていけない』が口癖の人を、あなたは止められる?」 もし明日、東京がゾンビで溢れたら——あなたなら、どうする? 逃げる? 戦う? それとも、助けに行く? 人口 1400 万。MBTI 16 タイプ。生き残るのは、たぶん、ほんの一部。 今日の主役は、ESFJ。 最後の夜、何度戻った人なのか——これから見ていく。

Phase 01

20XX 年 X 月 X 日、火曜日の朝。 ESFJ のあなたは、廊下を裂くようなお隣さんの絶叫で目を覚ました。 スマホはまだ見ていなかった。 玄関を開けると、お隣さんが震えながら立っていた。 下の階から、悲鳴がいくつも続いていた。 ESFJ はとっさにその人を抱き寄せて、それから初めて、世界が変わったことを知った。 「大丈夫、一緒に行こう」 それは、この半年で ESFJ がいちばん多く口にする言葉になる。 本人はまだ、それに気づいていない。 そこから ESFJ がやったことは、もう、本能みたいなものだった。 頭の中に並んでいたのは、ニュースの映像でも、避難場所のマップでもなかった。 ご近所さん。母親。幼馴染。職場の後輩。 名前と顔と、好きな食べ物が、ばーっと並んだ。 母親に電話。出るまで何回もかける。 幼馴染に LINE。「無事?」だけ送って、既読がつくまで画面を見続けた。 廊下を走って、独り暮らしの上の階のおばあちゃんの部屋をノックした。 返事がなくて、ドアの隙間から声をかけた。 「いる? 一緒に行こう。私もいるから」 ぜんぶ、1 時間以内のことだった。 ESFJ にとって、ここから先の半年は、この朝の延長戦みたいなものだった。

ESFJ のゾンビサバイバル — 物語の幕開けの場面
Phase 02

第 1 日の昼すぎ。 自治体の放送で、中央高校の体育館が避難所になると流れてきた。 ESFJ は、連絡がついた人たちを順番に連れて、体育館に向かった。 途中で、ESFJ は知らない子供 2 人と、どこかのおじいちゃん 1 人を連れてきた。 道端でしゃがみ込んで泣いてる子供の横にすっと座って、名前を聞いた。 動けなくなってたおじいちゃんの肘に手を回して、ゆっくり立たせた。 誰一人、強く説得したわけじゃなかった。 「一緒に行こう」と、また言っただけだった。 ここがな、ESFJ の「PTA 会長魂」が一番出るとこなんだけど。 ほら、運動会の朝、泣いてる子に真っ先に駆け寄る、あれ。 誰の子かも分からない子のところに、ぱっと行ける、あれ。 あれの、限界突破版みたいな話なんだよ。 第 7 日。体育館には、200 人近くの生存者が集まっていた。 そこで ESFJ がやったことは、たぶん、誰にもできなかった。 誰がいつ誕生日かを覚えていた。 誰がコーヒー派で、誰が紅茶派かを覚えていた。 誰がいつも壁際で寝るかを覚えていた。 配給は、自分の分を一番後に取った。 夜中に泣いてる子のところに、まず行った。 200 人のうち、ESFJ が名前を呼べない人は、たぶん、ひとりもいなかった。 でもね。 ここでさ、ESFJ には、ひとつだけ見えてないことがあるんだよ。 他人の限界は、秒で読めるんだよ。 誰の手が震えてるか、誰の呼吸が浅いか、誰がそろそろ折れそうか。 ぜんぶ分かる。 分かるんだけど、自分の限界だけは、最後まで分からないんだ。 「みんなが大丈夫かどうか」が、ESFJ の体力の物差しだから。 みんなが大丈夫じゃない限り、自分はまだ動ける、って思っちゃうんだよ。 だから、削れてる。 本人だけが、それに気づいてない。 そのまま、第 30 日が来た。

ESFJ のゾンビサバイバル — 物語が動き出す場面
Phase 03

第 30 日の夜。 体育館の外壁が、ついに破られた。 夕方から、外の悲鳴と、ガラスの割れる音の間隔が、少しずつ短くなっていた。 床に伝わる振動も、少しずつ近づいてきていた。 ESFJ はその音の変化に、誰よりも先に気づいていた。 でも、口には出さなかった。 みんなを不安にさせたくなかったから。 ゾンビが流れ込んでくる中で、出口は北側の非常扉ひとつだけだった。 200 人近くが、そこ一か所に殺到した。 ここからの ESFJ の動きを、後から、生存者たちは何度も話すことになる。 1 回目。 列の途中で、おばあちゃんが転んだ。 ESFJ は、迷わず逆走した。 おばあちゃんの腕を持ち上げて、抱えるようにして列に戻した。 間に合った。 2 回目。 小さい子が「ぬいぐるみ忘れた」と泣いた。 親は「いいから走って」と言った。 ESFJ は、聞こえなかったみたいに、また戻った。 体育館の真ん中で、毛布の下からぬいぐるみを掘り出して、走って戻ってきた。 これも、間に合った。 ここで、誰かが ESFJ の腕を掴んだ。 「もう戻らないで」 ESFJ は、笑った。 「大丈夫。あとちょっとだから」 3 回目。 誰かが叫んだ。 「あの人の足、止まった!」 ESFJ は、考える前に、もう走り出していた。 背中で、いろんな声がした。 「もう戻らないで」 「お願いだから」 ESFJ には、たぶん、届いてなかった。 ESFJ の頭の中にあったのは、たったひとつだった。 足が止まった、その人の名前。 そこだけだった。 牙が太ももに届いたとき、ESFJ は、その人の腕をまだ掴んでいた。 最後まで、置いていけなかった。

ESFJ のゾンビサバイバル — クライマックスの場面
Phase 04

ESFJ は、戻ってこなかった。 体育館を出た 200 人近くは、その夜、別の避難所にたどり着いた。 全員じゃなかった。 途中で何人か、はぐれた。 でも、思っていたよりずっと多くの人が、生きて朝を迎えた。 半年後。 生存者の一人が、炊き出しの湯気を見ながら、ぽつりと言ったらしい。 「ESFJ がいなかったら、私たち、たぶん、もっと早く死んでた」 その人は、それから、こう付け足した。 「3 回目に戻った、あの人の名前も、ちゃんと、覚えてる」 ESFJ は、たぶん、「全員」を救おうとした人じゃなかった。 「あの人」と「あの人」と「あの人」を、一人ずつ救おうとしていた人だった。 だから 3 回目も、戻った。 戻れる理由が、ちゃんと、名前のかたちであったから。 体育館で、ESFJ が「大丈夫、一緒に行こう」と言った数を、誰も数えていない。 たぶん、数えきれない。 でも、その「大丈夫」のうちの一つを、まだ覚えてる人がどこかにいる。

ESFJ のゾンビサバイバル — 結末の場面

Epilogue

ESFJ の選んだ夜、いかがでしたか? 「もし自分なら、3 回目に戻る?」「いや、戻れない」——どっちの答えでも、それは ESFJ が間違ってるんじゃなくて、人間って、それくらい簡単に割り切れない、ってだけ。 その答えを考えると、たぶん、誰かの顔が浮かんでる。 「大丈夫、一緒に行こう」って、誰かに言われたこと、ありますか。

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