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INFJ(提唱者) の立ち絵
Scenario / Zombie / Long

世界が終わった夜、あなたはこう動く

INFJ

提唱者

気づかれないまま、ひとりで消えた、優しい人の話

Prologue

「みんなが頼ってた人が、いつのまにかいなくなったとしたら、あなたは気づく?」 もし明日、東京がゾンビで溢れたら——あなたなら、どうする? 逃げる? 戦う? それとも、考えこむ? 人口 1400 万。MBTI 16 タイプ。生き残るのは、たぶん、ほんの一部。 今日の主役は、INFJ。 最後の夜、何を知っていた人なのか——これから見ていく。

Phase 01

20XX 年 X 月 X 日、火曜日の朝。 INFJ のあなたは、天井をじっと見ていた。 何日も前から、ずっと嫌な夢を見ていた。 街の人がみんな同じ目をしてて、自分だけが違う方向を向いてる夢。 意味は分からなかった。 ただ、起きるたびに、胸の奥が冷たかった。 スマホの速報が鳴ったとき、INFJ は、目だけ動かして、天井を見つめたままだった。 「やっぱり、あの夢だった」 驚きはなかった。 「来てしまったか」、だった。 起き上がるのに、少し時間がかかった。 慌てる感じじゃない。 これから自分が見るものを、心のほうが先に知っていて、体だけがついていけてない感じ。 着替えながら、INFJ が最初に頭に浮かべたのは、自分のことじゃなかった。 お母さん、大丈夫かな。 ひとり暮らしの友達、起きてるかな。 夜勤明けの後輩、まだ寝てるな。 それと、最近メッセージが返ってこなくなっていた、あの子。 自分が怖いかどうかは、ぜんぶ、後回しだった。 本人は、それを「後回しにした」とすら、思っていなかった。 INFJ にとって、自分を後回しにするのは、息をするのと、たぶん、同じくらい自然なことだった。

INFJ のゾンビサバイバル — 物語の幕開けの場面
Phase 02

第 1 日のお昼すぎ、INFJ は中央高校の体育館にたどり着いていた。 道中で、不安そうにしてる人に何度か声をかけた。 強くは誘わなかった。 「あっち、避難所できるみたいですよ」とだけ言って、あとは相手のペースに任せた。 体育館には、もう 100 人以上が集まっていた。 INFJ はすぐには動かなかった。 入口で 1 分ほど立って、空気を読んだ。 誰が一番つらそうか。 誰が一番怒ってそうか。 誰が、もう泣きそうか。 その地図みたいなものが、頭の中で、静かに出来上がっていった。 ここがさ、INFJ を見てて切なくなるとこなんだけど。 この人、ゾンビに襲われた東京で一番先にやったのが、「みんなの心が壊れないようにすること」だったんだよね。 ほら、クラスに一人いる「気が利きすぎる子」、あれ。 誰かが泣いてたら、いつのまにか隣にすっと座って、何も言わずに一緒にいる、あの子。 あれの、極限値みたいな話なんだよ。 第 7 日。体育館には、200 人近くが集まっていた。 そこで INFJ がやったことは、たぶん、本人以外、誰も覚えていない。 泣いてる子の隣に、何も言わずに座った。 喧嘩になりそうな二人の間に、さりげなく立った。 配給のとき、誰のコップが空なのか、誰の手が震えてるか、目だけで読み取った。 ぜんぶ、目立たないところで、終わらせた。 200 人のうち、INFJ に「ありがとう」と言った人は、たぶん、ひとりもいなかった。 気づかれないように、動いていたから。 でもね。 INFJ には、ひとつだけ、設計ミスがあるんだよ。 他人の限界は、ぜんぶ見えるんだよ。 誰の心が、いつ壊れそうか、INFJ には先に見える。 だけど、自分の限界だけは、本人には分かっている。 そして INFJ は、その限界を、本人にすら見せようとしない。 だから、削れてる。 削れてることに、誰も気づかなかった。 INFJ 本人だけが、たぶん、ちょっとずつ知っていた。 そのまま、第 30 日が来た。

INFJ のゾンビサバイバル — 物語が動き出す場面
Phase 03

第 30 日の夜。 体育館の外で、何かが大きく動き始めていた。 遠くで悲鳴があがるたび、誰かが体を縮めていた。 その日の INFJ は、朝から、ずっと、誰かの靴を拭いていた。 体育館の隅、誰も座らない壁際で、膝の上に布を置いて、ゆっくり、丁寧に拭いていた。 持ち主は、たぶん、その靴のことなんて、忘れていた。 INFJ は、忘れていなかった。 通りかかった人が、一度だけ聞いた。 「それ、誰の靴?」 INFJ は、顔を上げないまま、薄く笑った。 「いいの。気にしないで」 その日の夜、靴を前にして、INFJ がぽつりと呟いていた。 「もう、誰の感情も、受け取れない」 そばに、聞いてる人は、いなかった。 外の悲鳴が、急に近くなった。 ガラスが割れる音もした。 体育館の中では、北側の非常扉に、人がどっと集まり始めていた。 INFJ は、布を一度、ゆっくり畳んだ。 拭いていた靴の横に、その布を丁寧に置いた。 それから、立ち上がった。 ここからの INFJ の動きを、ちゃんと見ていた人は、ほとんどいなかった。 ただ一人、たまたま近くにいた子だけが、後で、こう話した。 INFJ は、みんなが北口に殺到していくのとは反対の、東側の通路へ歩いていった、と。 誰も使っていない、暗い廊下のほうへ。 後ろから誰かが「どこ行くの」と声をかけた気がする、と。 INFJ は、振り返らなかった、と。 でも、一度だけ、見えた。 通路の角を曲がる、その手前で、INFJ が薄く笑った気がした、と。 誰にも見えない場所で、ひとりだけ、笑った。 その笑顔を見たのは、たぶん、その子だけだった。 その子は、INFJ がいちばん気にかけていた子だった。 その子本人は、そのことを、知らなかった。

INFJ のゾンビサバイバル — クライマックスの場面
Phase 04

朝。 INFJ がいた場所には、畳まれた毛布だけが、残っていた。 持ち物は、何も、残っていなかった。 靴を拭いていた布だけが、靴の横で、きれいに四角く畳まれていた。 体育館を出た生存者たちは、その日のうちに、別の避難所にたどり着いた。 全員じゃなかった。 途中で、はぐれた人もいた。 でも、思っていたよりずっと多くの人が、生きて、朝を迎えた。 半年後。 INFJ がいつ、どこへ行ったか。 それを覚えている人は、もう、誰もいなかった。 「あの人、いつから、いなかったっけ」 そう聞かれて、誰も答えられなかった。 ただ、あの夜 INFJ が拭いていた靴の持ち主だけが、たまに、その靴を見つめていた。 半年経って、ようやく気づいたらしい。 「あの人、ずっと、私の靴を、拭いてくれてたんだ」 INFJ は、たぶん、消えたんじゃなかった。 ただ、誰にも見えない場所まで、ひとりで、歩いていっただけだった。

INFJ のゾンビサバイバル — 結末の場面

Epilogue

INFJ の選んだ夜、いかがでしたか? 「もし自分なら、誰にも告げずに消える?」「いや、ちゃんと言って行く」——どっちの答えでも、それは INFJ が間違ってるんじゃなくて、人間って、それくらい簡単に割り切れない、ってだけ。 その答えを考えると、たぶん、誰かの背中が浮かんでる。 「いつのまにか、いなくなったあの人」、覚えてますか。

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