20XX 年 X 月 X 日。 ISTP のあなたは、油で汚れた手で、古い機械をいじっていた。 作業場のラジオから、声が流れてきた。 「東京で、感染が、拡大——」。 ふつうの人なら、ここで、手を止める。 ISTP は、止めなかった。 聞こえてはいた。何が起きているかも、わかった。 でも、手のほうは、先に、最後のネジを締め終えた。 そのあいだに、ISTP の頭の中では、もう、別のものが動きはじめていた。 設計図だった。 「どこに、こもる。何を、組む。どこから、水を引く」。 災害のニュースは、ISTP の中で、ひとつの「設計のお題」に変わっていた。 その日の夕方。 ISTP は、街はずれの、廃工場を見つけた。 入り口の鍵は、もう、壊れていた。 ISTP は、入り口まわりを、ぐるりと一周して、構造を見た。 どこに、何を仕掛ければ、ゾンビを止められるか。 わかるまで、三秒も、かからなかった。 ISTP は、避難所のことを、一度も、考えなかった。 人の多い場所は、ISTP にとって、変数が多すぎた。 誰が、いつ、どう動くか、読めない場所より。 鉄と、コンクリートと、自分の手だけで守れる場所のほうが、ずっと、信用できた。 ISTP は、上着を脱いで、袖をまくった。




