診断結果に戻る
ISTP(巨匠) の立ち絵
Scenario / Zombie / Long

世界が終わった夜、あなたはこう動く

ISTP

巨匠

ことばより先に、手が動いていた人の話

Prologue

「『考えるより先に、もう手が動いてる』——あなたは、そういう人ですか? それとも、その人を、知っていますか?」 もし明日、東京がゾンビで溢れたら——あなたなら、どうする? 逃げる? 戦う? それとも、作る? 人口 1400 万。MBTI 16 タイプ。生き残るのは、たぶん、ほんの一部。 今日の主役は、ISTP。 誰にも頼らず、廃工場でひとり生き延びた人の話を——これから見ていく。

Phase 01

20XX 年 X 月 X 日。 ISTP のあなたは、油で汚れた手で、古い機械をいじっていた。 作業場のラジオから、声が流れてきた。 「東京で、感染が、拡大——」。 ふつうの人なら、ここで、手を止める。 ISTP は、止めなかった。 聞こえてはいた。何が起きているかも、わかった。 でも、手のほうは、先に、最後のネジを締め終えた。 そのあいだに、ISTP の頭の中では、もう、別のものが動きはじめていた。 設計図だった。 「どこに、こもる。何を、組む。どこから、水を引く」。 災害のニュースは、ISTP の中で、ひとつの「設計のお題」に変わっていた。 その日の夕方。 ISTP は、街はずれの、廃工場を見つけた。 入り口の鍵は、もう、壊れていた。 ISTP は、入り口まわりを、ぐるりと一周して、構造を見た。 どこに、何を仕掛ければ、ゾンビを止められるか。 わかるまで、三秒も、かからなかった。 ISTP は、避難所のことを、一度も、考えなかった。 人の多い場所は、ISTP にとって、変数が多すぎた。 誰が、いつ、どう動くか、読めない場所より。 鉄と、コンクリートと、自分の手だけで守れる場所のほうが、ずっと、信用できた。 ISTP は、上着を脱いで、袖をまくった。

ISTP のゾンビサバイバル — 物語の幕開けの場面
Phase 02

で、ここがね、ISTP って、問題を見た瞬間に、もう手の中に解決策があるタイプでさ。 ほかの人が「どうしよう」と言っている、その同じ時間に、ISTP の手は、もう、一本目のネジを回している。 工具は、廃工場に、あった。 材料も、そのへんに、ぜんぶ、あった。 設計図は——最初から、ISTP の頭の中に、あった。 ISTP は、ひとりで、組みはじめた。 入り口に、重さで落ちる罠を、仕掛けた。 壁の弱いところを、鉄板で、補強した。 食料を取りに行く道は、いちばん短く、いちばん安全なルートに、した。 水をくむ場所を、三か所、確保した。一か所ダメになっても、まだ二か所、残るように。 ISTP は、誰にも、相談しなかった。 する必要が、なかったんだ。 ひとりのほうが、早い。ひとりのほうが、正確だ。そして、ひとりのほうが、静かだった。 ほら、よく、いるでしょ。 説明書も読まずに、機械をいきなり分解するのに、なぜか、ちゃんと元に戻せちゃう人。 あなたの身近にも、ひとり、いませんでしたか。 ISTP は、その「なぜか直せちゃう人」が、ゾンビの世界に放り込まれた姿なんだ。 ここがね、よく似たタイプと、ちがうところなんだ。 ISTJ なら、まず、過去のリストを開く。 ESTP なら、まず、外へ、飛び出していく。 ISTP は、どっちも、しない。 工場の床にしゃがんで、目の前の鉄を、黙って手で確かめる。 動かしてみて、はじめて、その仕組みが、わかる。 ISTP にとって、世界は、読むものじゃなくて、さわって確かめるものだった。 第 7 日。 ISTP は、近くの体育館に、一度だけ、立ち寄った。 中を、三分だけ、見た。 そして、出た。 「ここは、非効率だ」。 ISTP が言ったのは、それだけだった。 人が多い。話し合いは長い。なのに、何も決まらない。 ISTP の目には、そこは「直しようのない、壊れた機械」に見えた。 直せないものには、ISTP は、時間を使わない。 半年が、過ぎた。 廃工場の入り口には、罠が、七つ、並んでいた。 七つとも、ちゃんと、動いていた。 ゾンビが来るたびに、罠が、止めた。 ISTP は、その内側で、ただ、手を動かしつづけていた。

ISTP のゾンビサバイバル — 物語が動き出す場面
Phase 03

この半年は、すべて、ISTP の「手」で、できていた。 罠も、補強も、修理も。 ぜんぶ、その二本の手が、やってきたことだった。 でも、その日。 ISTP の手のほうが、先に、壊れた。 四つ目の罠を、直していたときだった。 組み直していた仕掛けの、重い金具が、跳ねた。 よけた。でも、右手が、間に合わなかった。 鈍い音がして、ISTP の利き手の指が、二本、おかしな方向を向いていた。 ISTP は、声を、出さなかった。 まず、自分の手を、観察した。 折れている。たぶん、しばらく、使えない。 それは、ただの、事実だった。 ところが——次の瞬間に気づいたことのほうが、ISTP には、まずかった。 ISTP の設計は、ぜんぶ、「動く右手」を、前提にしていた。 罠の修理も、補強も、水くみも。 その右手が、使えない。 半年かけて組み上げた仕組みが、たった二本の指のせいで、止まりかけていた。 ISTP は、はじめて、自分の手で直せないものを、見た。 それは、ゾンビでも、壊れた機械でも、なかった。 自分の、手だった。 その夜。 五つ目の罠が、きしむ音を立てていた。直さなきゃいけない。なのに、右手が、動かない。 ISTP は、暗い工場の中で、左手で壁を、一度、強く叩いた。 「——っ、ふざけるな」。 半年で、はじめて、ISTP の声が、工場に、響いた。 それは、ゾンビに向けた声でも、機械に向けた声でもなかった。 行き場のない怒りだった。 その怒りが引いたあと、ISTP は、ほんの一瞬だけ、工場の入り口のほうを、見た。 誰かを、呼ぼうとしたわけじゃない。 ただ、見ただけだった。 そして、すぐ、目を自分の手に戻した。

ISTP のゾンビサバイバル — クライマックスの場面
Phase 04

朝が、来た。 ISTP は、動く左手で、できることから、始めた。 右手は、添えるだけ。 それでも、ネジは、一本ずつなら、回せた。 そして、ISTP は、やり方を、変えた。 半年間、ISTP は、「両手が使える自分」を、設計の真ん中に置いていた。 でも、それを、やめた。 五つ目の罠を、片手でも直せる仕組みに、組み直した。 力の要る部分を、減らした。 自分の手の限界を、はじめて、「直すべき故障」ではなく、「設計に入れる数字」として、扱った。 それは、ISTP にとって、いちばん、認めたくないことだった。 自分の手は、万能じゃない。 でも、それを認めた瞬間に、ISTP の罠は、前より、壊れにくく、なった。 七つの罠は、また、動きはじめた。 ISTP は、まだ、廃工場に、ひとりでいる。 誰かと組めばよかった、とは、思わない。 一人が、いちばん、効率がいい。 それは、半年たっても、変わらなかった。 ただ、ひとつだけ、変わったことがある。 ISTP は、もう、自分の手を絶対だとは思っていない。 自分の手の限界ごと、設計に入れられる人に、なった。 その日から、ISTP の作るものは、すこしだけ、本物になった。

ISTP のゾンビサバイバル — 結末の場面

Epilogue

ISTP の生き残り方、いかがでしたか? 「これ、絶対自分やる」「いや、私は誰かと組む」——どっちの答えでも、それは ISTP が間違ってるんじゃなくて、人間って、それくらい簡単に割り切れない、ってだけ。 その答えを考えると、たぶん、誰かの、油で汚れた手が、浮かんでる。 「ちょっと休めば」って言われても、つい、また工具を握ってしまう人、あなたの周りに、いませんか。

次に読む

ショート版で、さくっと振り返るテンポよく読める短編版(約 800 字)ほかのシナリオを探す